スタート時に拠点を構える地域は、5ヶ国。

・カナダのナジャーは、先住民イロコイ族の出身で、アメリカの法律事務所で働いた後、現在は東海岸の故郷で、クラフトアート・スクールを開く女性が務める。

・ポルトガルのナジャーは、航空産業でエンジニアの経験がある男だった。いまは世界中のミュージシャンが音楽づくりのために長期で籠りに来る、広大な農場型スタジオの主だ。

・ハワイで大規模ホテルチェーンのマーケティングに携わった後、タヒチに渡り、ポリネシアの伝統航海術を継承するサーフショップのオーナーもいる。

・コスタリカからは、穀物メジャー企業からエコツーリズムのガイドに転進した科学者夫婦が参画する。

誰もがFIREを果たした成功者ではない。無名のグローバル・ビジネスパーソンとして、懸命にキャリアを過ごし、ライバルから奪ったり、誰かを排するドライな競争に疑念を抱き、人生の質的な充足を求めて脱出した経緯を持っていた。

そして誰もが、小さなコミュニティで慕われる世話役だった。

「僕はあまり、サステナブルな暮らしを実践しているわけではありませんが……」

ネイビーが新しい同僚のリストを眺めながらつぶやくと、世耕さんは笑いながら応えた。

「能美さんは、例の中小企業をくっつける仕掛けをロウンチしながら、日本全国にお友達をつくったじゃないですか。あれ、あなたの財産ですよ」

――そうか。大船渡の造船会社、福井の和紙屋さん、燕の洋食器会社……商社マンだったおれには、土地に根を張り、仕事と人生とコミュニティを同化させる事業家たちが、実にうらやましかった。

おれがつくったのは、ドライなネットワークだが、彼らと直に話していると、〈新しい仕事は酒場で生まれる〉という地方の格言も実感することができた。バー&カフェをはじめたのは、きっと、あの時のわくわくする創発感が残っていたからだろう。

学び合いの拠点選択では、権力やイデオロギーで人間が統制される国々、過剰な金融至上主義や市場原理主義を主導する国々が、意図的に避けられた。創立のボードメンバーたちが驚いたことに、そうした国々の投資家や事業家からも、多額の支援金が集まった。これまで通りの学びや働き方に、潮の変わり目を感じているリーダーも増えているのだろう。

各地の運営費や人的コストは、そうした支持者による協賛で賄えた。ただし、参加生は1年に8日以上/最低1回、自費で別の拠点を旅して、仲間と対話することが入校の条件となっている。

次回更新は3月25日(水)、11時の予定です。

 

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