「えっどうして変なんですか、分かりません」
と言っていたので、本当に口が悪くて申し訳ないが「カマトトぶるんじゃない」と言ってやりたくなった。
「僕って変ですか」
とほかの職員にまで聞いたらしい。
そんなにうろたえたのかと思ったら、「先輩は無自覚なタラシですよ」とは言うことができなくなった。すみません。
よろめく、は一瞬で終わった。しかし、その後少し口論になった。朴訥先輩は「普通はそんな思い違いはしない」、そう主張するのだ。これがなかなかに頑なだった。「僕は変ではない」そういう主張も含むらしかった。
「話聞くよ」の危険性についてこんこんと私は説明した。実体験に基づいた例を挙げ、根拠を提示した。彼は「ああー」と嘆息を洩らし、ご理解いただけたようだった。
それ以来、朴訥先輩は私の人生の苦しみのようなものを唯一知る人となり、また福祉について色々意見が合致したり、衝突したりするちょっとした友人になったのだ。
しかし、相談されることは好きらしいが、自己開示することは好まないらしいので、先輩が愚痴を言うまでは特に私から彼の世界に干渉しない。
大きな声を出したことがないと言われる、とても優しい朴訥先輩が私の誤りを優しく指摘したことがあった。けれど、少し「ほーらみなさい」みたいな顔をしていたので、
「なんでも知ってますもんね」
と隣にいた利用者さんに、ねえ、と私が小首を傾げて少しからかうように言ったら、朴訥先輩は
「こうやってすぐにね、僕につっかかってくるんですよ、どう思いますか」
と私を指さして、先輩の隣にいた利用者さんに大声で尋ねた。
私はにっこり笑っていた。先輩、これ周りから見るとイチャイチャしてるように映るんですよ、そして人に指をさしたらいけないんですよ、と思った。また言うとむっとするので黙っておこうと思う。
先輩の不得意分野は「男女の機微」らしい(でも実はそうでもないんじゃないかという気もしている)。なので、拓也さんの事を話しても興味がないのがよく分かる。
なので、拓也さんのことは自分で解決するしかない。
次回更新は3月14日(土)、20時の予定です。