【前回の記事を読む】40代で妻と離婚し、家を出た……週末だけ一人娘と会う日々は、彼女が中学生になった頃から静かに変わり始め……

私が空を飛ぶ理由~つばめのつばさ~

三人の思い出

千葉県に入ると地の利がない上に、夜中は上空からの目印が少ない。想定はしていたので、房総半島に沿って南下することにした。

木更津、君津、富津。道路沿いの街灯が頼りだ。

鋸南、南房総を過ぎて館山に入ると市街地の灯りが不安を取り除いてくれた。もうすぐ最南端の野島崎灯台だ。

 

三人で来たのは何年前だろうか。景色は覚えていないし、上空からではもっとわからない。行楽シーズンの下の道はところどころで大渋滞していて、日帰りするには往路だけですこぶるかかったのを覚えている。帰りは運転する自分も含めて、みんなぐったりしていた。

深夜の上空に渋滞のストレスはない。風にもうまく乗り、すいすい飛んで、あっという間に灯台に着いた。近くにはホテルもあるが、明滅する光は一番の目印だ。八角形の白い胴体が周囲を囲む岩礁の中央にぽつんと浮かび上がっている。

灯台のライトは眩しすぎて、まともに見ると視界を失う。上から近づいていくしかなさそうだ。メインライトの上にある帽子のようなてっぺん部分は、途中からアールが急になっている。一番上のあたりなら何とか座れそうだ。ゆっくりと降りて、滑り落ちないように移動しながら360度を見渡してみた。

東京方面は宝石のように輝いているが、反対側はどこまでも漆黒の太平洋が横たわっている。漁に出ている船の漁火で、水平線の位置は予想できる。昼間に見れば、地球の丸さが手に取るようにわかるのだろう。

房総での思い出にひたりながら、灯台からの景色を堪能する。午前四時になっていた。日の出が遅くなったとはいえ、帰りは逆風で時間がかかりそうだ。

私は大きく息を吸い目を閉じて羽ばたきを始めた。上空では少し押し戻される風を感じた。体力勝負になりそうだ。海岸沿いを進み、元来た道を戻ろう。