「ママも、嬉しかったわ。あなたの、一番素敵な姿を見せてあげることが出来て」
「パパは、おじいちゃんだね」
「私達が、歳をとらないからね」
「ぼく、おじいちゃんといいそうになったよ」
「そんなパパ、嫌い?」
「いや。だいすきだよ。やさしいから」
「そう。よかった」
「また、あいたいな」
「……」
「こんど、いつあえる?」
「わからない。いつ来てくれるかな。早く会えればいいね」
「パパは、ママとけっこんしていないの」
「結婚する前に、お前が出来たの」
「では、けっこんしたらいいよ」
「……」
「ねえ。けっこんしてよ」
「そうね」
「けっこんして、みんなでなかよくくらそうよ」
「そうなったら、いいね」
「そうなったら、たのしいな」
「ええ」
「いつか、そうなるひが、きっとくるよ」
「ええ。楽しみに、待ちましょう」
親子の魂は、安らかな眠りについた。
俺は、先程の夢が忘れられなかった。
昼食を食べながら、妻に説明した。
「お前と一緒に、M子とN雄に会った。それが、とてもリアルなんだ。夢とは、思えなかった」
「夢と現実は、紙一重ですからね」
妻が、ゆっくり答えた。
「お前も、あの夢を見たのか」
「いいえ。私は、お呼びではなかったわ」
「そうか」
「いいの。私は、いいの。前に言ったでしょう。あなたとのお付き合いは、M子さんの方がずっと早く、長いのだから。生まれ変わった時の、あなたとの結婚の権利は、彼女に譲ることにしたわ」
「それは、生まれ変わった時のことだろう」
「夢も、同じよ。私は、それでいいの」
「俺は、お前に嫌われたのか」
「いいえ。好き嫌いではなく、M子さんに道を譲るだけ。道徳の問題ね」
そう言って、妻が笑った。
「今、ふっと思ったのだけれど、もしM子さんが交通事故に遭わないで、生きていたら、どうなっていたかしら」
そのことの記憶が回復して間もなくなので、俺にとっては唐突な問いかけであった。
次回更新は3月27日(金)、21時の予定です。
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