「えっ。おじちゃんは、パパなの?」

そう叫んで、俺に抱きついてきた。それを高く抱き上げる。懸命に、腕を伸ばす。

「パパ、だいすき」

嬉しい言葉に、思わず微笑む。

その時、電話の呼び出し音が鳴り始めた。

みんなの姿が消え、階下から、

「あなた、Kさんから電話よ」

と、妻の声がした。

長い夢が、終わった。

M子も、夢を見ていた。

死者も夢を見る。夢は、魂のなせる業。身体は失われても、魂があれば、夢を見る。死者と生者は、夢でつながる。つながった夢は、現実に近づく。

M子の夢は、Fの夢と同じであったようだ。

現実とは、多くの人が同じ夢を見ること。M子は、Fと同じ夢を見ることによって、しばしの間、現実によみがえった。M子は、Fが彼女のことを思い出してくれたことによって、夢の同期が可能になった。死者が生者に思い出されて、生者と死者が同じ夢を見て、同期され、この世によみがえる。

M子は、例のベンチに座っていた。先程の夢を振り返っていた。

「N雄ちゃん、パパに会えて、よかったね」

自分の大きなおなかに、ささやいている。その姿は、死んだ時のままだ。

「うん。もっとあそびたかったな」

N雄の声が聞こえる。

不思議なことだが、これも夢なのだろう。

「パパ、お前のことがかわいくて仕方ないようだったよ」

「そういってたね。うれしかった」