【前回の記事を読む】死んだ彼女がいるベンチへ、夢の中で妻と向かった――彼女の傍らには見知らぬ男の子がいた

あの世で、君と結ばれる

「N雄ちゃんは、いくつですか?」

何も考えずに、聞いた。

「あんた、そんなこと聞いて……」

と、妻にたしなめられた。

「おなかの中で死んだ子です。だから、歳はありません」

M子が、静かに答えた。

「おじちゃん、あそぼう」

そんなN雄の幼い声が、俺の耳にこころよく響いた。

「かわいいな」

高く抱き上げた。

「子どもは、これくらいが一番かわいいな」

そう言いながら、N雄の年齢を計算した。 

交通事故で死んだのは、随分前。生きていたら、立派な青年になっている筈だ。

しかし、目の前にいる子は、3~5歳くらい。この食い違いは、どういうことか。そこまで考えて、今は夢の中であることを思い出した。夢ならば、そのような食い違いがあっても、問題はない。N雄の姿は、母のM子が命の仮想アルバムから選び取った最もかわいい時のものなのであろう。

そんなことを考えていたら、

「おじちゃん、どうしたの。あそぼうよ」

とのN雄の声で、我に返った。

「おじちゃん、おうまになって」

「はいよ」

無邪気な声に、すぐに応じた。

芝生の上に、四つん這いになった。

「さあ、乗って」

勢いをつけて跨り、衝撃があった。

四肢を伸ばして、馬になった。

「さあ、しゅっぱつ」

N雄の掛け声で、走り出した。

意外と、重い。結構きつい運動だ。

「もっとはやく」

N雄が叫ぶ。

「もう、だめだよ」

「もっとはやく」

N雄は、容赦しない。

「N雄、パパに無理を言ってはだめよ」

M子がたしなめる。