第五話 学校の勉強は難しい

「の」の字を読めて入学

ケンが入学する時に読めたのは「の」の字のみであった。たまたま新聞に「の」の字が多いことに気付いたからである。

そこで彼はひたすら「の」の字に丸をつけた。そして最後に母ちゃんに「なんて字?」と聞いたところ、「の」だと言う。ケンはこの「の」の字のみを知って小学校に入学したのである。

8が書けない

「の」の字しか読めないで入学したケンの学習は惨憺たるものであった。

さっそくぶつかったのが、「8の字が書けない!」ことである。ゆっくりと丁寧に書いていくのに、なぜか途中で8が横に寝てしまうのである。今日でいう無限大の記号、「∞(インフィニティー)」である。

たとえば18‌4‌の場合は1∞4となってしまう。ケンの担任の先生は中学校の校長先生のお嬢さんとかで、華の香漂うような、色白でういういしい、ケン憧れの先生であった。

彼がノートを恐る恐る出すと、一言も注意することなく、にこっとして、そのまま∞を 8と認めてくれた。テストのときも丸をつけてくれた。当時のノートを彼は今でも大切に保管している。貴重な宝物なのだ。

しかし、そうはいっても、やがて2年生になる。ケンは1年生の終わり頃、一計を案じた。「そうだ8は団子ふたつを重ねればいいのだ」。つまりoを上下に重ねて8としたのである。

ついでに6はoに髭、9はoに1の棒をつけた。みんなからは「変な数字!」と囃し立てられたが、結局はそれ以降もそれで通した。

ところが、後に製図を書くようになった時に、これが製図文字として役立った。人生って面白い!

 

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