プロローグ ─ 新宿ゴールデン街 ─

新宿のゴールデン街で久しぶりにバーボンをあおる。

と、カウンターの後ろに「電気ブランあります」の貼り紙が目に入った。

「おおっ! 珍しい! 電気ブランを置いとくの?」と聞くと、

「最近、昔を思い出して、〈電気ブランあるか?〉と聞かれるので、置いておくんですよ」とマスター。

「懐かしい。私も貰おう」

その時に隣で飲んでいた青年の一人が「先輩も学連ですか?」と声をかけてきた。

「学連か、懐かしいな、その言葉」と答えると、

「聞かせてほしいんですよ…」と青年が言う。

「そのまえに」とケンは言い、

「せっかくだ。きっとなにかの因縁だろう。ここのみなさんにもその電気ブランを一杯願います」とマスターに頼んだ。

「ごっつぉさんです」と青年が言い、

「どこに集まって、どこで解散したんですか?」と矢継ぎ早に聞いた。

「ああ、デモか?」

「そうです」

ケンは急に若き日の自分を思い出し、こころが弾んだ。