彼は自分の人生を振り返り、自らの経験と考えを記してくれました。

その寄稿文には『小児外科の実習で、私と同じ病気の子が三十年たった現在はどのような手術を施されるのか、興味深く見学させていただきました。

人工肛門がキズを目立たないように臍(へそ)に成されていることを実際に見ることができ、排便機能を修復するだけではなく術後のQOL向上にも目を向けられて発展してきた分野なのだということを実感しました』とあります。

ちょっとうれしい一言です。

さらには『こうした手術を受けたことによる合併症や不安がいつ出現するかは予測できない場合もあるかと思います。

従って成人後の不安を解消するため、手術後患児が成人するまで長期的にフォローアップできる体制を作り、その中で長期的な合併症に対する情報の蓄積を行い、成人した患者にフィードバックできるようになれば最も理想的だと思います』ともありました。

彼の父は転勤族であったため、術後早期に小児外科医との関係は途切れてしまったようです。実体験に基づいた重要な一言でした。

まさかその後、その“成人後の不安”をかかえた彼をフォローアップする機会が訪れようとは、当時はまったく思いもよらなかったのでした。

そしてそれから十年後の現在、彼は外国留学を経て、ふたたび大学に戻り、小児内科医として我々とともに働き出しました。

結婚をし、子どもができ、と順風満帆(じゅんぷうまんぱん)の生活の中、ふと病院の廊下ですれ違い交わす一言二言の中に彼の腹痛の話題が紛れ込むようになりました。

実は彼にとって子どもの時から腹痛は普通のことになっていたようです。

ところがついに最近、腸閉塞で入退院を繰り返したと聞き、気にしていたところでした。

そんな矢先の電話が冒頭のような手術の話だったのです。

次回更新は2月6日(金)、8時の予定です。

 

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かつての患者が同僚に…小児科医がつないだ「医のバトン」

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