もう今から十七年ほど前のことです。手術室で学生と術衣に着替えているときに、小児外科を実習していた五年生のお腹に手術創があることに気がつきました。
「赤ちゃんの時の人工肛門の手術だね」
「えっ、どうしてわかったんですか?」
その手術創の部位、大きさ、瘢痕(はんこん)の状態などから、ただそれだけの手術ではなさそうなことにも気がついていました。しかし本人は自分の病気のことは、手術された東北の病院の名前と病名くらいしか聞いていなかったようでした。
彼が実習している期間には、赤ちゃんの人工肛門の造設・閉鎖の手術もあり、彼はそれらの手術を目を輝かせ見ていました。
しかし彼の口から出たのは、外科よりは小児内科に興味がありますとの残念な(?)言葉でした。
彼は卒業後に小児内科医となりました。それから七年たち、宮本は旭川で第十八回日本小児外科QOL研究会を主催しました。
小児外科手術を受けた子どもたちの生活の質=QOL(Quality of Life)について医療職みんなで考えようという研究会です。
この時のプログラム集に宮本は、新生児期に手術を受け今は医師となっている二人の後輩にそれぞれの経験の寄稿を依頼しました。そのうちの一人がX先生だったのです。