「ごめんなさい」
ひとみが謝ると、剛は無言で皿の上の料理を無理矢理口の中に押し込み、飲み下してから言った。
「俺も占いなんか信じない。俺たちがそんなに簡単に死ぬはずがない。だけどこれは何かの陰謀の可能性がある。用心に越したことはない。足立、あの女は本当にここを去って行ったんだな?」
「はい。玄関でお見送りしました。ただ、今晩は近くのホテルに泊まると言っていました」
「夜中にここへ来る可能性はないのか」
「来たとしても許可がなければ入れさせません。ここは防犯カメラなどセキュリティもしっかりしていますので勝手に家に入り込むことは不可能かと思います」
「一応、用心のため姉さんとは離れた部屋で寝る。俺は大広間の西側の部屋で、姉さんと母さんは東側の部屋で一緒に寝る。それなら2人が同時に襲われる可能性は低くなるからな」
「私は嫌よ」
貴子が冷たく言い放った。
「えっ、どうして?」
直美が驚いて訊ねた。
「あんたたちと一緒の部屋にいて私まで襲われちゃったらどうするのよ」
あまりにも薄情で身勝手な母親の態度に直美と剛の表情が強張ったので、貴子は焦った。
「いや、ていうか、あんた達、ほんとにあの占い師の言うことを信じてるの? いやだ、あんなのこけおどしに決まってるじゃない。やあねえ。あんなのもう気にする必要ないわよ。ほら、食べて食べて」
夕食が済んで部屋に戻ると麻利衣は賽子に訊ねた。
「賽子さん、今度の予言をどう思いますか?」
「今度の予言も的中するだろう」
「えっ、じゃあ、島木華怜は本物の予言者だって言うんですか?」
「何故おまえにそれを説明しなければいけない」
「え?」
「島木華怜の正体を暴くのはひとみさんから依頼されたことだ。後でひとみさんに直接話す。おまえが勝手に手柄を横取りしないとも限らないからな」
「失礼な! 私はそんなことしません。助手として雇っておきながら、何でそんなに私のことを信用しないんですか」
顔を真っ赤にして抗議する麻利衣を無視して、賽子はベッドの上で瞑想を始めた。
「しょうがない。今、11時30分。麻利衣、私たち、広間で待機しておこう。0時にもし不幸が起こるのなら、私たちの手で防げるかもしれない」
「うん……」
ふくれっ面しながら麻利衣が千晶と部屋を出て行くのを賽子は片目だけ開けて見ていた。
次回更新は2月7日(土)、21時の予定です。
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