その時、彼らの背後で声がした。振り向くと頭が禿げ上がり、眼鏡をかけた、ひとみと同じくらいの身長の、ブラウンのベルベットラウンジウェアを着た老人が柔和な笑みを湛えながら歩いてきた。

「ひとみ、お客さんかね」

「こちらは父です。千晶のことは知ってるでしょ。隣のお二人は千晶のご友人です」

「そうですか。娘がいつもお世話になっています」

小佐々崇夫は身分に釣り合わないほど深く頭を下げた。

その時玄関ドアが開き、小柄で厚化粧で、流行遅れのパーマをかけ、グレーのトレンチコートを着てピアスやネックレスや指輪など全身を装飾品で着飾った邪険な感じの中年女性が、ボブカットで目の大きい軽忽な印象の若い娘と、大柄で眼鏡をかけた寡黙そうな青年を引き連れてエントランスに入ってきた。

「お義母様、お久しぶりです」

ひとみが三人に挨拶したが、彼らはそれを無視した。

「やあ、久しぶりだね」

崇夫が笑顔で声をかけると彼の妻、貴子は一瞬そっぽを向いてから言った。

「一人で勝手にこんな田舎に引っ越したかと思ったら、急に呼び出すなんてどういうつもりかしら。まさか離婚の話し合いでもしようと言うんじゃないでしょうね」

「まあ、それに関しては夕食の後でゆっくり話そうじゃないか。一人ずつ部屋を用意しているから今夜は泊まっていくといい。足立、案内して」

「かしこまりました」

三人は足立に随って奥の部屋へと向かっていった。

「お見苦しいところをお見せして申し訳ない。私が勝手に本宅を出てここに一人住まいするようになってから折り合いが悪くなってね。ひとみ、君も今夜は泊まっていきなさい。ご友人の方達もどうぞ。ただベッドはありますが、部屋があと一つしかないんですが」

「私たちは三人で泊まりますので大丈夫です。ね、麻利衣、賽子さん」

千晶が同意を促したので麻利衣は「はい」と頷いたが、賽子は無表情だった。

「でもお父様、本当に今日は一体何のお話があるんでしょうか?」

ひとみの問いに崇夫は笑顔で答えた。

「それは後で話すよ。それより夕食までゆっくり休みなさい。まず、お友達に部屋を案内したらどうだい」

次回更新は1月29日(木)、21時の予定です。

 

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