「ここよ」

千晶は豪壮な邸宅の駐車場にベンツを停めた。麻利衣は車を降りるとその壮観に圧倒された。

邸宅は平屋ではあったが天井が高く、壁板は黒く艶々に塗装されており、天然石の石積みで覆われている部分もあった。ガラス張りの部分が多く、中の優雅で気品のある内装もレースカーテン越しに見て取れた。

「これって別荘? 本宅じゃなくて?」

「小佐々グループと言えば国内有数の企業グループだからね。元会長が住むにはこれでも小さいくらいかも」

千晶は二人を連れて玄関に向かいチャイムを鳴らした。賽子は黒のプリーツスカートに黒のジャケットを合わせていた。風格のある木製のドアが開くとスーツを着た背の高い陰気な男が丁寧に頭を下げた。

「増田千晶様ですね。お待ち申し上げておりました。私、小佐々の秘書を務めております足立と申します。どうぞお入りください」

広々としたエントランスに入ると奥からグレーのシャギーニットカーディガンを着た一人の女性がこちらに向かって歩いてきた。小柄で清楚な印象の女性は麻利衣と賽子に会釈してから千晶に話しかけた。

「千晶、ありがとう。こんな所までわざわざ来てくれて」

「当たり前でしょ。友達なんだから。こちら、大学時代の友人の那花麻利衣」

「はじめまして、那花です」

「はじめまして、小佐々ひとみです。それじゃ、お医者さん?」

「いえ、私はまだ……」

「国試2浪中なの。でも来年はきっと合格するわ」

千晶にあっさり言ってもらってほっとしたが、それでも麻利衣はセレブの二人に疎外感を感じずにはいられなかった。

「では、こちらの方が探偵さん?」

ひとみは賽子を見て言った。

「いかにも」

賽子は名刺を取り出し片手で彼女に手渡した。

「タリス超能力探偵事務所……何だか変わってますね」

「でも、この間の事件で刑事が犯人だって当てたのはこの人なのよ。すごかったのよ」

千晶が興奮して言った。ひとみは賽子に頭を下げた。

「河原さん、お聞きになっているとは思いますが、父はこの家に入り込んできた島木華怜(かれん)という占い師に騙されているみたいなんです。彼女に唆されて土地や株も売り払って全て現金に換えているようなんです。

あの人はきっと父の財産を狙っているに違いありません。河原さんに華怜の正体を暴いてほしいんです。報酬はお支払いいたします」