大学1年生だった私は、映画を見ながら、「タキシードを着て蝶ネクタイを締めるアメリカのお金持ちの世界はこうなのだ、ジュリア・ロバーツみたいな美女が飲むシャンパーニュは自分とは無縁」と思っていました。

ライムライトのカウンター席で、雅子さんがジュリア・ロバーツのようにモエ・エ・シャンドンを飲んでいたのです。

モエ・エ・シャンドン、略称モエは、世界でいちばん売れているシャンパーニュで、7秒に1本コルクが開くそうです。

当時、27歳の雅子さんが、自分で初めてオーダーしたボトルがモエでした。雅子さんは、店が混み始めたタイミングで入店し、「シュワシュワするのがありまして、それならすぐに出せますけど、飲んでみます?」と言われ、店員さんを気遣い「それでいいです」と答えたら出てきたとのこと。

いつものように、ドアから入って来た私に柔らかくほほえむ雅子さんは、ジュリア・ロバーツよりも輝いていました。

飲み物が変わるだけで、こんなにもカッコよくなるのかと、一口飲ませてもらってスッキリした酸味に驚きました。

「これがシャンパーニュなのか。アメリカの大富豪はこんなお酒を飲むのか」

とタイムスリップし、映画の場面に飛び込んだ気がしました。

同じ炭酸系でも、私がいつも飲んでいるビールとは何もかもが別物。

柔らかそうに見える泡は、オシャレだけれど勢いがしっかりしていますし、キリッとした酸味、のど越しのスッキリ感も感じました。

あとから考えると、この瞬間、「ワイン虫(バグ)」に噛まれてはいませんが、ペロッと舐められていたのです。