23.転ばぬ先の杖

悪いことが起こらぬように、あらかじめ準備をすること。2017年11月

モスクワに行くと決めたものの、久しぶりの一人旅に不安はあった。

なにしろかつてのイタリア一人旅で、30歳の時はローマでスリに、40歳の時はイタリア帰りのパリでひったくりの被害に遭っている。すられたペンケースはどうしようもなかった。

中には高校入学祝いに恩師から頂いた万年筆や思い入れのあるモンブランのボールペンや中学のころから使っていた定規も入れていた。愛用していたものが失くなったのはとても残念だった。

ひったくられたバッグの中には現金のみならずパスポートや復路の航空券が入っていた。警察で犯罪証明書を出してもらい、航空会社で帰りの航空券を再発行してもらい、証明写真を撮って、帰るための渡航書類手続きで大使館へ行き、ほぼその日一日潰れた。

そんな、あまり人が経験しないことを体験している前科がある。「一人旅、大丈夫かな?」と心配になった。

しかも今回のモスクワ滞在は土日。何かあっても大使館は休みの日。ぜったいにパスポートは失くせない。

そうだ! いい考えが浮かんだ。母の服を着て、全身母に守られている状態で行こう。ブラウスもパンツもジャケットも母の物。

ショルダーバッグも母が旅に使っていたチャックがたくさんついた物。これをたすき掛けにして上からコートを着れば、パスポートを取られることはないだろう。母と一緒に旅しよう。

パスポートに使うような証明写真。持って行くとよい、とガイドブックに書いてあるが、それまでは「それ、いるかな?」と思っていた。パリで被害に遭った時、証明写真が必要になり、その撮影にわざわざ写真屋に行った。

こういう時のためにあった方がいいんだな、とその時思った。だから、今回はパスポートを作る時に予備にもらった写真を持って行った。

念のため、海外旅行傷害保険もかけた。1泊3日だから1,700円余りと安価だった。以前は、何もないだろうから保険代はもったいないと思ってかけなかったので、被害の補償はなかった。何かの時のためにかけておけば、安心だった。

転ばぬ先の杖。

これで、何があっても大丈夫。という状態で旅に出た。

 

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