【前回の記事を読む】「死亡後も執拗に刺された形跡」…猟奇的殺人の被害者は、娘のストーカーだった。父親は、娘の関与を否定していたが…

サイコ1――念力殺人

「超能力者(サイキック)というものは」

賽子が言った。

「自らの能力は周囲には家族にさえ秘密にしている者がほとんどだ。能力を見せると最初は感動してもらえるがそのうちに嘘つきもしくは化け物扱いされるに決まっているからな。それにこの国には超能力者(サイキック)を拉致・監禁し研究の実験台にしたり洗脳して特殊工作員に養成したりする極秘の機関が存在する。

そいつらに見つかったらおしまいだ。だから超能力者(サイキック)は普段は全く普通の人間として生活している。通常それを見分けることは困難だ。だが私には他人の超能力(フォルス)を感知する能力がある。隠していても近くにいればそいつが超能力者(サイキック)だとたちどころに認識できる。

あれだけのナイフを飛ばして殺人を行うなど犯人は超一級の超能力者(サイキック)に違いない。そんな能力を持っている人間はそうはいない。そしてこの中でその能力を持っているのは……」

全員が固唾を呑んだ。

「おまえだ」

賽子が指をまっすぐ指し示した先にはあまりのことに面食らった羽牟の顔があった。

「は? 僕?」

さすがに彼は失笑した。

「いやいやいや、僕が超能力者? もうおかしくてやってられないよ。君はそんなこと言うために僕らを集めたのかい? 悪ふざけにしては度が過ぎるんじゃないかね」

麻利衣もぷっと噴き出した。

「はははははは、何を言うかと思ったら、刑事さんが超能力で林さんを殺したって? あなたって本当にいかれてるのね。でもよかった。これで私、あなたの助手にならずに済みそうだわ」

賽子は無言で嘲笑する二人を冷ややかな視線で見つめていた。

「本当に馬鹿々々しい。こんな茶番につきあって時間を損したよ。それじゃ我々はもう帰らせてもらうよ。千晶、帰るぞ」

邦史郎が千晶らを促して玄関に向かおうとした時、鍬下が後ろから声をかけた。

「待ってください」

邦史郎が振り返った。

「まだ何か?」

「せっかくお集まりいただいたので謎解きの続きをしませんか?」

邦史郎はあからさまに嫌な顔をした。

「これ以上何があるって言うんですか。我々はこんな頭のおかしい変人とつきあっている暇なんてないんだ。犯人が誰かなんてどうでもいい。我々は帰らせてもらいます」

邦史郎が行こうとすると鍬下が再び声をかけた。

「犯人がこの中にいるとしても?」