【前回の記事を読む】顔面が激しく破壊され、立ったまま絶命していた男性…事件前日の夜、近所の人は“工事現場のような騒音”を聞いていた…
サイコ1――念力殺人
「すみません。それでそのトラックがソル・エクスプレスという精密機器専門の物流会社のものだと分かりました。
それでそこに問い合わせてその日どこへ何を運送したのか確認したら、その日はちょうど増田脳神経外科病院に新型MRIを搬入する日だったそうです。MRI搬入は病院周囲の道路が重機で塞がれてしまうことから夜間に行うことも多いそうです。
ただ、東京港から病院への最短ルートはここから随分離れていて、だいぶ遠回りをしたことになります。しかもトラックがぎりぎり通れるくらいの住宅街の細道を何故わざわざ通ったんでしょうか。会社ではそんな指示はしていないそうです。
疑問に思ってMRIを搬送した2人の作業員に電話してみたんです。実にしどろもどろの回答でしたよ。明日任意で話を聞くことにしていますが、僕は二人はこの事件の犯人に金で依頼されたのだと思っています」
「依頼って何を」
「おそらく二人は午前0時頃、トラックを林家の北側の駐車場に停め、クレーンでMRIを吊り上げ、その時小窓に灯りがついていた二階のコレクションルームの外壁間際にMRIを近づけた。
MRI――磁気共鳴画像法はその名の通り強力な磁場を発生させ、体内の詳細な画像を取得する技術です。今までも誤ってMRI室に鉄製の酸素ボンベや車椅子を持ち込んでそれが目の前から吹っ飛んでMRI装置に嵌まり込んで取れなくなるという事故がたくさん起きています。MRIの磁力はそれほど強力なんです。
ただ最近のMRIは永久磁石型は少なく、超電導磁石型、つまり電流を流している時だけ磁場が発生する仕組みが主流です。
彼らはおそらく発電機も用意してMRIに電源を入れ強力な磁場を発生させた。その時、林はいつもどおりその部屋で自慢のナイフを満足げに鑑賞していたことでしょう。
しかし磁場が発生した瞬間壁に飾っていた全てのナイフが磁力に引きつけられ凶器と化し、彼がいた北側の壁めがけて凄まじい勢いで飛んでいって彼の体を壁に磔にした。スマホが壊れたのは飛んでいったからではなく強力な磁場でデータが破壊されてしまったからでしょう。
それとMRIは検査するときにドリル音のような大きな雑音が聞こえます。近所の住民が工事と勘違いしたのはその音だと思います」