【前回の記事を読む】都心の住宅街で見つかった、激しく損壊した変死体。事件前日、近所の人はその家の“ある異変”に気づいていた。それは…

サイコ1――念力殺人

「もしもし、羽牟です。ああ、河原さん。えっ?」

羽牟はしばらく話し込んだ後、電話を切った。

「どうしたんですか?」

眉根に皺を寄せている羽牟に鍬下が訊いた。

「いや、どうもこうもないよ。今晩、林家で犯人が誰か教えてやるから来いだってさ。あの探偵さん、ほんとに頭がおかしいんじゃないかな」

「でも本当に犯人を知っているかもしれない」

「ええ? 君まであのオカルト先生の信者になるつもりじゃないだろうね」

「そうじゃありませんけど、どうしてハムが彼女をマークしているのか気になるんです。何か彼女には秘密があるような気がするんです」

鍬下の言葉に羽牟は渋い顔で黙っていた。

日が沈むと空の色は既に薄くなって青だか灰色だか判じ難い色になっていた。麻利衣はもう少し着込んで来ればよかったと思いながら春の夕暮れの肌寒さに肩を震わせた。

林家のドアを開けると玄関には所狭しとたくさんの靴が並べられていた。不審に思いながら居間に入るとそこには羽牟、鍬下、千晶、鍋本、邦史郎、沙織の六人が賽子を取り囲むように立ち並び、睨みつけていたが、当の本人はいつもどおり涼しい顔で腕組みをして立っていた。

「えっ、千晶のご両親まで呼ばれたんですか?」

麻利衣が呆れて言った。

「私も知らなかったのよ」

千晶が泣き出しそうな顔で言った。

「全く迷惑な話だ。突然電話がかかってきて犯人を教えるからってここに呼ばれたんだ。確かに千晶は奇しくも殺人事件の発見者になってしまったが、そもそも被害者とは何の関わりもない。犯人が誰かなんて興味もない。それを我々まで呼び出すなんて一体どういうつもりだ」

邦史郎が不満を漏らした。

「そんな戯言がいつまで通用すると思っているんだ?」

賽子の言葉に一同が凍りついた。

「戯言だと。どういうつもりだ」

「戯言だから戯言と言ったのだ。あなたは千晶さんが被害者の林良祐と交際していたことはとっくに知っていた。未だに知らぬふりをするから戯言と言ったのだ」

千晶の顔が蒼褪め、邦史郎の表情に狼狽の色が見えた。

「何を言ってるんだ。私はそんな男のことなど知らん」