いずれの研究グループでもα-syn病理群(パーキンソン病やレビー小体型認知症など)でのα-syn・シードの検出率は90〜95%前後くらいと高く、対照群の10%前後と比べても有意に高い結果となっています。
こうしたマーカーの評価ですが、検査がどれくらい正しいかを示す値として「感度」と「特異度」を組み合わせて使われます。「感度」は病気の人を検出する力を示し、「特異度」は、病気でない人を検出する力を示します。両方の値が高いほど優れた検査方法といえます。
感度が90%とは、パーキンソン病と診断された100人のうち90人を「陽性」と正しく診断できたということになります。特異度が80%とはパーキンソン病でない100人のうち80人を「陰性」と正しく判断できたということです。目指すべきは100%です(現実には難しいですが)。
感度が90%というと高いような印象ですが、10%は病気なのに病気でないという検査結果(偽陰性)が出たことになります。こうした方は、発症前に検査で陰性と出ても将来パーキンソン病を発症してしまうことになります。
また特異度が80%の場合、20%は病気でないのに病気だという検査結果になります(偽陽性)。つまり、本来パーキンソン病を生涯発症することのない方に、発症前診断で結果が陽性と出てしまうことになるのです。早期の介入(発症前の治療)まで行われたらご本人にとって大変不幸なことになってしまいます。
世界中でも稀な優性遺伝型のα-syn遺伝子変異家系のような発症が必発の場合は、積極的に早期介入してもよい例外といえるかもしれません。
3)アルファ・シヌクレイン(α-synuclein,α-syn):α-synは1997年、最初に発見された家族性パーキンソン病の原因遺伝子である(遺伝子シンボルPARK1:文献2)。
遺伝子産物は140個のアミノ酸からなり、中枢神経のシナプスに豊富に存在する。また孤発型パーキンソン病の神経細胞内に見られる封入体であるレビー小体(Lewy body)の主要構成成分であることが判明した(文献3)。凝集化したα-synは細胞毒性を持つ。
1 平山正明「パーキンソン病と腸内細菌」(p80-84)NEUROINFECTION 27巻1号 2022年
2 Polymeropoulos MH et al., Mutation in the alpha - synuclein gene identified in families with Parkinson's disease. Science. 1997:276(5321):2045-7.
3 Spillantini MG et al., Alpha - synuclein in Lewy bodies. Nature.1997:388(6645):839-40.
4 Braak H et al., Staging of brain pathology related to sporadic Parkinson's disease. Neurobiol Aging. 2003:24(2):197-211.
5 Hawkes CH et al., Parkinson's disease:a dual - hit hypothesis. Neuropathol Appl Neurobiol. 2007:33(6):599-614. doi:10.1111 /j.1365-2990.2007.00874.x.
6 Siderowf A et al., Parkinson's Progression Markers Initiative. Assessment of heterogeneity among participants in the Parkinson's Progression Markers Initiative cohort using α-synuclein seed amplification:a cross-sectional study. Lancet Neurol. 2023:22(5):407-417. doi:10.1016/S1474-4422(23)00109-6.