【前回記事を読む】家族性パーキンソン病の遺伝子同定に成功した医師が明かす、研究現場での葛藤と海外での挑戦、そして病態理解の重要性

はじめに

本稿では、このパーキン遺伝子についてなぜ真実とは異なる研究結果が垂れ流され、結果として病気に苦しむ人々を一喜一憂させながら、その都度がっかりさせることになってしまったのか、また、病期を少しでも遅らせることのできる方法があるのだろうかという問いに、私なりに答えたいと思います。

私の研究モットーは「真実は必ず明らかになる。フェイク(誤った研究仮説)はいずれ暴かれる」であります。そして「研究を絶対に諦めないこと」です。私自身は努めて、時間がかかっても一つ一つ事実を積み上げ、パーキン蛋白の本当の機能解明に従事してきたと自負しています。

そこで、今の時点で病勢を抑えることができそうな実践可能な方法論を議論したいと思います。いや、むしろ治療というより予防医学または未病医学の観点から、特にグルタチオンとポリフェノールを例にとって、それらがパーキンソン病にどのように影響するかに焦点を当てます。

他にも、私が本書を今だからこそ書いておこうと思った理由がいくつかあります。それは、パーキンソン病の未来の研究や治療法の開発に向けての「憂い」と「私の義務感」に依拠するものです。詳細は他項にて紹介させていただきます。

なお、本書は、第1章を除いてエッセイ式に文書をしたため、かき集めたものです。各項の中に、他項と重複する内容や表現があるかもしれませんが、お許しください。むしろ、これらの重複は私が強調したい点とご理解いただけますと幸甚です。

また、一般読者の方には難解と思われる科学的議論や説明が多々あるかと思います。本書の意図は、これらすべてを理解していただくことではありません。ただ、専門的議論のもとに、さまざまな見方・意見があり、その中で真実を見つけていくことの努力がさまざまな研究者によって行われていることを知っていただければ十分で、全体的な流れをご理解いただければ本書の目的は果たしたと考えます。

真実を見つけることは簡単ではありません。次から次へと大発見が続くような研究室や機関があるとすれば、その研究の内容をよく吟味する必要があることをご理解いただけると思います。