明日の世界はきっと、もっと愛に満ちた所になるだろう。

信じる能力に誰よりも長けた青年は確信した。

二回目の毛布のデートもやっぱり彼女の家族の咳払いで早々に切り上げさせられたが、ドゥモは、最近ハミングアローが特に悩みがあるわけでもないのに寝つきが悪く、知らない間にあまりたちのよくない精霊に何かされているんじゃないかと不安がっていることを突き止めた。

彼女のためには、月だって取って進ぜようという所存のドゥモは早速、エルク・ドリーマーの所へ出掛けていった。

近頃エルク・ドリーマーは、インベーダー達の持ち込んだ悪魔の水で、昼も夜もなく正体不明になっていることが多かったが、素面(しらふ)の時の彼の力は、外の世界にも知れ渡るほど確かだった。

ドゥモは数日のあいだ、エルク・ドリーマーの様子を岩陰から伺い、やっと素面になったらしいところを見計らって、彼を訪ねた。

五枚のバッファローの皮を差し出し、笛を作ってくれと依頼すると、エルク・ドリーマーは、五枚ぽっちじゃとても引き受けられないとすげなく断ってきた。

エルク・ドリーマーが村八分状態に陥ってしまったのはこのためなんだ。彼らの伝統では、グレートスピリットから授かる能力はどんなものでも、自分のものじゃない。授かった能力はみんなのために使い、決して私利私欲のために乱用してはならないのだ。

彼も昔は素朴で思いやりのある人間だった。エルク・ドリーマーになってからは特に、鹿の精霊の力を借りて何組ものカップルを成婚させた、素晴らしい呪術師だった。

勿論、それで対価を得るなんて、インベーダー達に出会うまでは思いもよらなかった。だが彼は、変わってしまったのだ。

 

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