【前回の記事を読む】お目当ての彼女は婆さんみたいに毛布を被り込み、男女の若者がダンスに興じるのを眺めていただけだった…

真夜中の精霊たち

彼が毛布を持ってティーピーの前に立つと、まだ外にいた家族達はティーピーの中に引っ込み、中にいたハミングアローがもったいぶって出てきた。

彼が来たことに気がついたキッキング・バードの、なんとも言えない深刻そうな表情が気になったが、ハミングアローの顔を見ると、嬉しさに胸が躍らずにはいられなかった。

持参した毛布で自分とハミングアローをすっぽり包むと、夜はまるで二人だけのためにあるようだった。毛布の天井にも、星が浮かぶようで――

「君が好きだよ、ハミングアロー」

気分はどう?とか、素敵な夜だねとか、もっと会話を始めるための相応しい言葉があったはずだけど、ドゥモはその場の相応しさよりも、自分の本当のところを語るほうを選んだ。彼女の最も深い夜に似た瞳の色は、彼に真実を信じさせてくれるから。

「なぜ?」

「覚えている? 僕が川で君を水浸しにしてしまった時のこと」

「ええ」

「あの時、君は僕に、それまでとは違った姿を見せてくれたね」

「そうなの?」

「そうだよ。あの日、君は昼だというのに星のように明るかった。小さな頃から君を知っていると思っていたけれど、そうではなかった。あの時、僕は初めて君に出会い……」

彼はそれから少し間をおき、彼女は彼が再び口を開くまで辛抱強く待った。

「君を想うようになった」