【前回の記事を読む】【60歳~80歳】老後の生活は180度変わる——再出発のターニングポイント。今までの成功が通用しない人生の後半戦とは

第1章 人生後になるほど面白く

ある高齢者が夏の暑い日に「ところてん」を食べていた時、どんぶりに入ったところてんをジーッと見つめて「俺の人生なんか、このところてんのようなもんだ」つぶやいたことを思い出しました。

「生まれてからこの60年代の初めに還暦を迎えるまで、ところてんのごとく後ろから押し出し棒で押されてきたようなもので、大騒ぎしながらもずるずると進んできたが、ところてん突き出し器の出口から押し出された細長いところてんは、今度は後ろから押してくれる力がないから一旦どんぶりの中に入り、その後誰かにすくわれて口に運ばれるか、どんぶりの底に溜まり続け最後は残り物として流しに捨てられるかに分かれる。

ところてん突き出し器の出口から出たところてんは、今までの形状とは全く違い1本1本細くまとまりもなく、少し強く引っ張れば切れてしまうか弱い状態になってしまっているが、四角く柔軟で固体であったところてんの独り立ちなんです。

細く力ないが、しなやかにどのようにでも曲げられ、酢やゴマダレで味付けされ、ところてんとしての完成を見る。大好きなところてんを食べるたびに、人生はところてんみたいなものだと思うんです。

なんでこんなつまらないことを思うのか自分でもよくわからないのですが、なぜか夏になるとところてんが恋しくなって食べるんです」

「今日も退屈な1日であった、誰とも口をきくこともなかった」と仕方なく酒を飲み、飯を食い、風呂に入って床に就く。そして明日も変わらぬ日がやって来る。

「人生後ほど面白い」そんなことあるわけがない。