俳句・短歌 歴史・地理 歌集 歴史 2020.09.16 歌集「風音」より三首 歌集 風音 【第7回】 松下 正樹 何気ない日常にある幸せを探しに。 優しい風を運ぶ短歌集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 くうくうと雄のよぶ声に誘かれて 鳴かぬ雌がひたと寄り添ふ たけり鳴く恋のあわれさ池じゅうに 雌雄ひしめきてさざ波 起きる 雌の背なにおしかかる雄の重たさに 浮き沈みつつ蛙は交る
エッセイ 『ボクは、笑顔でできている ~多くの人に支えられて、白血病と闘うことができました~[注目連載ピックアップ]』 【第2回】 向井 健一郎 「病名は急性リンパ性白血病です」"急性リンパ性白血病"は約10万人に1人の確率で発症する。なぜ私が、と妻と二人で泣いた。 翌日の朝に、もう一度血液検査とエコー検査などを行いました。消化器内科の医師からは、「肝臓や脾臓は少し腫れているが、これが痛みの原因とは考えにくいです。最初のCTスキャンの画像を見ると、リンパ腺がいくつか腫れているところが見られたので、午後からは血液内科で診てもらいましょう」という話がなされました。私は「血液内科」とは初めて聞く名前だったので、これは何の病気だろうと思っていました。午後、病室が血液…
小説 『29歳、右折の週』 【第13回】 言田 みさこ 何日もたたないうちに彼女は子宮ガンで死んでしまった。「こんなに明るいならきっと治るだろう」と皆安心していたのに… 【前回の記事を読む】にこにこと話しかけながら、その背中を好意的にパタパタ叩くんだけれど、それが手のひらじゃなくて、真っ白の黒板消しだった理緒子の家は、築数十年という古い公団アパートの一階にあり、六畳と四畳半の二間に家族5人(理緒子は長女で、下に妹が二人いる)が暮らしていた。あさみは何度かそこへグループで呼ばれたが、板の間の狭い台所に据えられた丸テーブルを囲んで、背もたれのない低い小さな丸椅子にな…