【前回記事を読む】「歴史ある落語会で史上初!3日連続、弟子入りを志願」…しかし、弟子をとるべきか?
第一章 怒 涛
四、めちゃめちゃ悩んでしまうやないかい!
マスコミでも顔が売れており、俳優としても多くのドラマに出演するなど、幅広く活動していた。そして、多くの弟子がいた。
源太郎はその十番目の弟子だった。
「俺の場合、どの人の弟子になるかは、事前に色々と情報を集めて決めたけどなあ」
個人的に芸風が好きな落語家は他にいたが、その人は指導が厳しく、弟子がすぐに辞めてしまうという評判だった。だから、その人への弟子入りは最初から選択肢からはずし、弟子の面倒見が良く、仕事の面でも有利に働くケースが多い桂源兵衛に弟子入りすることを決めたという。
結果、源太郎の判断は大正解。師匠の名前を最大限に利用し、落語家としての今の地位を築いた。
「克ちゃんの場合はどうやった? マニアックな選択やったんやろ?」
源太郎に言われて、喜之介は自らの弟子入りの時のことを思い返す。
喜之介の師匠は、花楽亭喜桜(からくてい きおう)。
「花楽亭」という亭号を名乗る落語家は、昭和から徐々に少なくなり、喜之介が弟子入りを考えていた当時は喜桜一人だった。
その喜桜は一部の落語ファンからは評価されていたが、世間的な知名度は低かった。
では、なぜそんな落語家に入門したのか?
ひと言でいえば……何だか気が合いそうだったから。
 
   
   
       
               
               
               
       
             
             
       
       
    
    
    
    
    
   