第1章 憲法が保障する権利

本章では、最初に、憲法が保障する権利を概観した後、それらの背景にある価値観・原理は何か、その価値観・原理の核心を体現する特別な権利はあるのかなどを見ていく。

権利概観

憲法は国民の国家に対する権利を保障している。憲法が保障する権利の分類の仕方は様々で、五つの参照文献もそれぞれ異なる分類方法を採用している。その中で木村・憲法(55から236頁)に、簡潔に諸権利を整理した記述があるので、以下要約して紹介する。

■自由権
ある国家行為を「しない」ことを要求する権利(不作為請求権)で、さらに防御権と特定行為排除権に分かれる。

・防御権
国家行為の類型を問わず、あらゆる国家行為から〈国民の特定の行為〉を保護する自由権で、例えば、信教の自由(二十条)、表現の自由(二十一条一項)、営業の自由(二十二条一項)。

・特定行為排除権
〈特定の国家行為〉を禁止する自由権で、例えば、奴隷的拘束からの自由(十八条前段)、検閲されない権利(二十一条二項前段)、拷問を受けない権利(三十六条前段)。

■請求権
ある国家行為を「する」ことを要求する権利(作為請求権)で、さらに社会権、国務請求権、参政権に分かれる。

・社会権
福祉国家的国家観(自由主義的な国家は、各国民に自由を保障するだけではなく、自由な市場の中では十分な生活の糧を得られない者に対し援助する義務も負うべきとする国家観)に基づき保障される憲法上の請求権で、例えば、生存権(二十五条一項)、教育を受ける権利(二十六条一項)。

・国務請求権
国家の業務やそれに伴う賠償・補償を求める権利で、例えば、国家賠償請求権(十七条)、正当補償請求権(二十九条三項)、裁判を受ける権利(三十二条)。

・参政権
国民が政治のための制度に参加する権利で、例えば、国会議員の選挙権(十五条一項)。

■平等権と差別されない権利
・平等権
他の国民と等しく扱われ、合理的な根拠のない区別をされない権利(十四条一項前段)。

・差別されない権利
自らが国家による差別の対象になった場合、あるいは、国家が自らに対する差別を助長する場合、その是正を求める権利(十四条一項後段)。

■包括的基本権
十三条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」で包括的に保障された諸権利(新しい人権)。


[注1]    劣位に置いているかどうかは客観的に(一般人の目で見てどうかで)判断し、差別者の意図の有無は問わない
[注2]    不利益を与える可能性がある行為かどうかは客観的に(一般人の目で見てどうかが基本だが、心身ダメージの判断には専門医師の意見を適宜請うこともありで)判断する

 

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