【前回記事を読む】咀嚼や歩行、鼻をすする、その動きは自分の意志? 「随意運動」と「自動運動」の動きについて解説!
I 動きと意識のダイナミクス
筋肉と運動神経
筋肉には、骨格筋、平滑筋、心筋があるが、体の動きに関係しているのは骨格筋である。
骨格筋は多数の筋線維(骨格筋細胞のこと)が数十本集まって束になり、筋周膜という膜で囲まれて筋束(筋線維束)を形成し、さらにこの筋束が集まって一つの筋を形成している。この筋束の束を包んでいる膜を筋上膜(筋膜)という。また一本の筋線維は、多数の筋原線維からなっている(図1)。
筋原線維は、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントという2種類の筋フィラメントが規則的に配列してできている。
ミオシン分子には頭部といわれる構造があって、この頭部が首振り運動のように動くことでアクチンが引き込まれ、筋線維の収縮が生じると考えられていたが、新しい知見では首振り運動ではなく、ミオシンフィラメントの頭部の部位がアクチンフィラメントに沿って前後にブラウン運動(熱による運動)していて、ある距離前方に進んだ時点でアクチンと強く結合しブラウン運動が止まり、これに伴い次にアクチンフィラメントを後ろ向きに引っ張る力が発生し、アクチンフィラメントがミオシンフィラメントに引き込まれ、滑り込むことによって筋線維の収縮が生じると考えられている(1)。
筋線維の種類は、収縮が遅い遅筋線維と収縮が速い速筋線維に分けられる。大部分の筋肉では遅筋線維と速筋線維は約50パーセントの比率で分布している。