【前回記事を読む】「ハワイアンフラダンス」と「アイドル歌手のダンス」の違い……そこから考える“意味のない動き”とは?
I 動きと意識のダイナミクス
随意運動と不随意運動
次に動かそうとする意図があるかないかによって、「随意運動」と「不随意運動」がある。ふだん日常的に行われている動きは「随意運動」である。
これは、動こうという自分の意志、意図にもとづいて行われる随意的な動きということである。
「不随意運動」というのは、いわば病的な状態での動きであり、自分の意志に反して体が勝手に動いてしまうようなことをいう。
「随意運動」について、動きを開始するタイミングというのを考えた場合、まず動作者によってその動きが完全に自由で自発的なタイミングで開始される場合と、何らかの外的な刺激によって動きが開始される場合とがある。
自発的なタイミングというのは、そのタイミングが内部情報つまり記憶にもとづいて行われるものを意味するが、かりに動作を開始するタイミングが自由で自発的であったとしても、そのタイミングは動作者によっては心理的にもいろいろ考えられ、何らかの刺激の影響があって、記憶を通じて自発的に開始することもあるだろう。
何らかの外部刺激によって動きが誘発され、発現するという場合、動きの内容がその外部刺激に関連していることが多いように思われる。
またあとで述べるが、自由で自発的な動きと、外部刺激によって誘発される動きとでは、脳表で記録される電位変化において違いがあり、自発的な動きでは運動開始の前に運動準備電位という電位が測定されるが、外部刺激による動きではその電位が測定されない。
外部刺激で誘発される動きの中で、反射的な動き(反応性の動き)という素早い動きがある。これには危険の回避という意味があると考えられる。
たとえば急にすぐ近くで爆発音のような大きな音がしたとすると、危険性が察知され、そこから遠ざかろうとして、反射的に体が音とは反対の方向に動く、場合により反対側に倒れこむなどの動きが反応性に現れる場合がある。
部屋でイスに座っていて、顔のすぐ近くにあるガラス窓を急に外からドンと誰かに思いきりたたかれると、おどろいて反射的に窓とは反対側に倒れそうになる。