【前回記事を読む】コップを手に取るとき、画面をスクロールするとき、指先の"動き"を意識していますか?動き続ける人体と意識について―

I 動きと意識のダイナミクス

ジェスチャー

ここでジェスチャーという行為を考えてみる。ジェスチャーとは、他者に何かを伝えるためにする身振りのことであり「パフォーマンス」といえる。

非言語コミュニケーション(nonverbal communication)として、言語コミュニケーション(verbal communication)とともに頻繁に使用されるものだが、このジェスチャーには、意味のあるものと意味のないものとがあるといわれている。

意味のあるジェスチャーとは、指で丸くつくってOKサインをだすとか、寝ていることを表現するため両手を合わせて耳につけ、頭を横に傾けたり、バンザイで両手を挙げるとか、サヨナラで手を振るとか、おなかがいっぱいですという感じで両手をお腹にあてがうとか、たくさんある。これらは何らかの意味内容を伝えるものである。

意味のないジェスチャーとは、たとえば何となく手を耳の近くにもっていったり、あごの下でパーのような指を作ったりなど、見ているものがその動きの意味を理解できないものということである。

意味のない動きとは

ところで日常の場面で、意味のない動きについて考える。他者から見たら意味がない、意味が理解できない行為というのは確かにある。しかし本人にとってそれが本当に意味のない動きなのかどうかはわからないともいえるだろう。

本人にとっては何らかの意味があっても、他者にはわからないということもあるだろう。また本人にその動きの意味を聞いたとしても、本人も答えられないということもあるだろう。

しかし本人が答えられないとしても、それで意味のない動作であると判断することはできない。本人にとって意味があっても、本人がその意味を説明できない(言語化できない)という場合もあるだろう。

ところでずっと同じ姿勢で座って仕事をしていると、肩や腰などの筋肉がこわばった感じになり、体を動かすことによってほぐされリラックスされることもあるが、この時の体の動かし方は人それぞれであって、もしその動きのごく一部だけを見たとしたら、おそらくその動きの意味はわからないだろう。これは理解できない動きでも、本人にとっては意味があるという場合である。