感染症などを防御する点でも、このストレッチャーは患者さんと介助者との接触が減るので有用です。介助者がこれまで要していた下腿保持から解放され、本来の業務である検査医の補助や患者さんの看護に集中できるようになり、より安全に検査を行うことができるようになったといえるでしょう。
足台付き内視鏡ストレッチャーの使用によるメリットは他にもあります。大腸ポリープの手術であるEMR(内視鏡的粘膜切除術)や入院ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)など長時間の治療においても、検査医の内視鏡操作をする手元の空間が広くなり、患者さんの体位も安定することから、安全な治療完遂に貢献できることが明らかになっています。
日本の医療では長らく、患者さんの苦痛を取ることは二の次の事柄として捉えられてきました。当然正しい診断と治療が最も大切です。
しかし、無理強いをして大腸カメラ検査を行ってきた状況が、「大腸カメラは痛く、つらく、しんどく、恥ずかしい」といった負のイメージを植え付けてしまいました。
負のイメージが、必要な大腸カメラ検査を受けにくくしてしまい、それが皮肉にも大腸がん罹患数・死亡数の上昇に貢献してしまったともいえるでしょう。
著者は苦痛を無理強いして検査を行うことはかねがね問題であると考えてきました。
現場で働いてきた故に分かるヒントをもとに現場の声を集めて開発した機器は、日本の医療、世界の医療の未来にとって有益なものであると考えます。著者は苦痛の少ない大腸内視鏡検査法の発明と普及活動に対して、2022年に京都府知事より京都府発明等功労者表彰を拝受しています。