【前回記事を読む】【大企業で新規事業を成功させるには】まずは企業のステージを理解すること。「大衆迎合」という、企業成長の真っ当なプロセスを…
1章 大企業が繰り返す茶番劇の正体
この章では、大企業の特性を共有した上で、大企業における新たな事業創造のやり方や狙うべき領域選択の間違いを指摘していきます。
巨大な資金は「他人のお金」
ここで、大企業側に話を戻します。さきほど、大企業は他人のお金で成り立っていると言いました。したがって、他人のお金を使うためには、誰から見ても合理的である理由が求められ、不確実な投資は許されません。
事業創造初期だからといって判断基準が甘くなることもないのです。また、すでに多くの資金を持つために、さらにお金を使って損をしてしまう確率と、お金を使わずに現状を維持することのどちらが合理的か、という難しい判断も迫られます。
このように、大企業はスタートアップと異なり、「今は何もしない」「お金を使わない」という選択肢が合理的である場合も現実として大いにあり得るのです。
他人のお金を非合理に減らすことへの批判に比べれば、成長意欲に乏しいという声など優しく聞こえるでしょう。
考えてください。持つお金が自分のお金であり、「使わない」という選択肢がないスタートアップと、持つお金が他人のお金であり、「使わない」という選択肢も持ち得る大企業を比較すると、新たな事業創造において、どちらが積極的となるでしょうか。もう答えるまでもありませんね。
こういった背景を踏まえ、大企業の決裁スキームは慎重に判断されやすい合議制となっています。合議制はリスクヘッジに重きを置いた仕組みであり、こういった仕組みがないと、投資家は安心して自分のお金を預けることができません。
私自身、大企業の実務者が一つの承認を得るためにかけている苦労と時間をよく理解しています。NTTドコモでいくつもの長い承認プロセスを体験したからです。