隣は何をする人ぞ
燕が子育て真っ最中。
古巣で卵を産んだかと思えば、別のつがいが巣を新築した。直立する白壁に泥団子を貼りつけては、草の繊維を織り込み、堅牢で安全なスイートホームを作り上げた。
今年はどうしたことか、新築と中古合わせて五つも巣が出来上がった。最初の雛たちは、すでに大空を飛び回っている。最後にできた巣の中では、孵ったばかりの雛がか細い声で餌をねだっている。
巣と巣には、二メートルほど間隔がある。飛来する際に邪魔にならないためか、互いに子育てを気遣ってか、不思議な距離を保っている。都会に暮らす人々の間では、隣家との境界線を巡って、一センチメートル単位での争いもあると聞く。
あるいは壁や床を通して聞こえる騒音で、マンション暮らしは両隣と上下階の部屋とのトラブルを抱えることもある。
お隣さんとの付き合いは、昔から微妙に難しいもの。気持ちよく挨拶ができて、近況を尋ねるぐらいの話ができれば、一番無難だ。詮索しすぎはよくない。人には聞かれたくない事情もあるだろうし、言いたいことがあっても半分以下に留めておくと、トラブルには発展しにくい。
これが国と国どうしになると、過去の揉め事も交渉の手駒の一つに持ち出され、国民感情をあおって、政局への批判をかわす政治的な道具に使われる。
ほどよく距離を保ちながら、隣人を愛することができれば、世界中がもっと平和になるのに。 (二〇一三・七)