【前回の記事を読む】「私、初めてです。こんなに気持ちがいいって…」――彼の顔を見るのが恥ずかしい。顔が赤くなっているのが自分でも分かった

第一章    辛い結婚生活

「さっきの続きをするね。姉は欲が強くて、僕は付いていけない。両親が残してくれた財産の分配を自分で勝手に決めていた。遺言書には、はっきり実家は僕に、今の僕のいる土地は姉にと明記されていた。

それなのに姉は『実家は私がもらう。丈哉は埼玉の土地を貰いなさい』。

僕が『何で?』と聞いたら、

『丈哉は子供がいないから、この山岡家は継げないでしょう? これからだって子供は望めないし、ここは私が引き継ぐから。主人とも話して、名前も山岡に変える。うちには康太が居るから、山岡家を守れる。あなたは子供を作れないでしょう?』。

僕はショックで言葉が見つからない。実の姉に言われた事が衝撃だった……。

義兄さんが『節子(せつこ)、よさないか!』と制した。

『だって、本当の事でしょう』。

義兄さん、『馬鹿者! 丈哉に謝れ』。

深呼吸して、言った。

『姉さんの好きにしていいよ。お母さん名義の現金でお墓を作り、土地の名義変更等、金がかかるすべての物はこれから支払って、お墓が出来、すべての名義変更が済んだら報告してほしい。確認出来たら、僕は戸籍を抜くから。姉さん、これでいいか?』

『別に戸籍を抜いてほしいわけではない』

『いいや、僕が抜きたい。姉弟の縁を切りたい』

『分かった。そうしましょう』。

甥っ子は『おじさん、ごめんなさい。母がわがままで!』

『康太、いいよ。小さい頃から、いつもそうだった。自分が一番じゃないと許さない人だったから、これでよかった。僕も我慢の限界だ。康太、すべて終わったら、僕に連絡して。僕の名義の預金はもらっていく。姉さん、もう会う事はないでしょう。体に気を付けて、さようなら』