希望の欠片が木の葉のように散った。あたしの血脈と同等の日銭が、ぬかるんだ地面を容易く格上げする。
「これは何だ」
そのうえ、うなじをわし掴まれ、無頓着に揺さぶられた。頬を刺す視線が痛い。血だまりとなった体液が唇の皺に沿って流れ、鈍色(にびいろ)に染まった。
「誰にやられた、テル!」
――調教してやる!
今さら誰にやられたかなんて口にしたくもない。代償はいつもの何倍も奪ってやった。それで、終わりだ。
「ど変態の客だった。だからふんだくってやったの。それだけ。大袈裟にしないでよ」
怒鳴られるかと思った。それほど、内臓を通過する乾いた空気音が響いた。しかし、彼は「来い」と引きずるだけで、それ以上の追及はしなかった。
「もういいよ……」
ビンさんには悪いけど厨房には入りたくなかった。あの絶望を味わった日から、屋台村の深部から抜け出すと決めたのだ。だけど、どんなに爪先で踏み止まろうと、筋肉が浮くほど引かれては成す術もなかった。
瞬く間に煙と熱気が充満した。壁に貼りついた埃まじりの油が一層粘度を増して見える。ここは男たちの聖域。あたしを地の底へと貶める、忌むべき場所だった。