次の日、「鯵、釣れたから」と言って、常連の後藤さんがたくさん持ってきた。「明日は刺し身だね。次の日はアジフライだ」嬉しそうにとしゑさんは言った。

「後藤さんも明日来てねー」「分かった、来るわ」と言って帰った。

時々、魚を持って来てくれる人だ。当時、私は〝明日も明後日も楽しみ〟だと思った。

1人で店を訪れた時、初めて出してくれたのは、ローストビーフだった。飲み込む力が弱いので、食べられるか心配してくれていた。薄く小さめに切ってあった。

「美味しい、食べられたわ」

としゑさんは「良かったわ」とちょっと目が潤んで見えた。私も目頭が熱くなっていた。

「としゑさん、去年ハワイに行った時、食べられる物があまりなくて、今年も行きたいけど自信がないんだ」と私は言った。

すると、としゑさんは「いつもハワイ島の話を楽しそうにしてくれるから、一度は行ってみたいと思っていたの、私がついて行って、作ってあげるよ」と言った。

その年のオハナツアーは、としゑさんとハワイ島に行き、マーケットに行って野菜やお肉を買って、フラの先生の家で、全員でとしゑさんの手料理を食べた。

ローストビーフとチキンサラダも作ってくれた。ハワイの人も美味しいと言ってくれた時、としゑさんが凄く喜んだのを見て、忘れられない一日になった。ハワイのセロリが、大きくて甘くて美味しかった。

先生の家で何泊も泊まった時、2人で大きなダブルベッドに寝た。2人の仕切りにバスタオルを丸めて、顔を見合わせないようにしてゲラゲラ大笑いしたのを思い出した。

 

👉『喫茶「トマト」とハワイ』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】添い寝とハグで充分だったのに…イケメンセラピストは突然身体に覆い被さり、そのまま…

【注目記事】一カ月で十キロもやせ、外見がガリガリになった夫。ただ事ではないと感じ、一番先に癌を疑った。病院へ行くよう強く言った結果…


2024年に話題を呼んだ『幸せを呼ぶシンデレラおばさんと王子様』の著者による待望の新連載『夢を叶えた、バツイチ香子と最強の恋男』が、2025年9月5日(金)22時より配信開始!

42歳、バツイチ。途方に暮れた香子が足を踏み入れたのは、「住み込みお手伝い募集」の豪邸。猛アピールから始まった出会いが、彼女の運命を激変させる——。香子の新たな人生と、最強の恋の行方にぜひご期待ください!