「いやーね、こんなに降ると、思わなかったわ」と店に入った。店の中には、大きな石油ストーブがあり、暖かくてほっとする。その時、バーンと窓に何かが当たった。

私は、「あっ、鳥。あの鳥、窓がわからなかったみたい。ぶつかったわ。でも飛んでった」あとから来た岡田さんが「あれは、茶色いから、雌のジョウビタキだよ、雄はお腹の部分が橙色で凄く綺麗だよ、ヒィヒィと鳴くんだよ」と言った。私は一瞬でジョウビタキだと分かる岡田さん、凄いと思った。

としゑさんは「目が悪いんだわ。私と一緒だ、何回も当たるの」と笑った。すると岡田さんは、「鳥は目が人間より視力が遥かにいいから、窓に写った自分を敵と勘違いして、ぶつかったのではないのかな」と言った。

「見て見て、奥の椿の花に止まってるのは、メジロだよ。受粉してるよ」と教えてくれた。この日はおかずはひじきの煮物だった。

「美味しかったわ」

「これ持って帰って」

「ありがとう、夜のおかずだわ。また、来週ね」

庭先に毎年咲く、黄色の木香薔薇が私を見てと言わんばかりに、2週間は咲き続けてくれる。

その周りには蔓薔薇・熱帯植物のアブチロン・高知県土佐に自生しているところから名がついた土佐水木・開花時期が長いキンセンカ・その名の通りブラシのような花が咲くブラシノキなどが迎えてくれる。窓から見える梅の花が寒かった冬から春を知らせに来ていた。

ある日、隣の席にモクモクとご飯のおかわりをして、大きな口を開けて食べている中年の男性がいた。

帰る時「おばさん、美味しかったわ。また来ます」と「ありがとう。この辺の人じゃないね」男性は、外を指さして、「そこの工事に来てます。明日も晴れたら来ます」

としゑさんは「はーい。明日ね。待ってまーす。ありがとうございます」帰った後、「あんなに美味しそうに食べているから、こっちまで嬉しくなるわ」と私は言った。