第一章 父と私、そして別れ

父との別れ

私の父は、2016年6月に急逝しました。

脳梗塞でした。

倒れてから、わずか4日で亡くなりました。

倒れるちょうど1週間前、私は介護老人保健施設で父に面会していました。

お茶や水を飲まずに捨てていると、職員からの申し送りがありました。部屋を訪れて、「パパ、出されたお茶はパパの体に必要なものなんだから、捨てないで飲みなさいよ」と、私は父に注意しました。

父の死後、知り合ったリハビリ施設の方に、「お父さんは飲みたくても、そのときはもう嚥下ができない状態だったのかもしれない」と、教えられました。

そう聞いたとき、生まれて初めて、私は父から人生において最大で最重要なことを教わったように思いました。死に方のお手本を父が身をもって教えてくれたように感じたのです。

倒れて4日あまりで逝ってしまう、それは私を苦しめまいとしたようでした。私も願わくば、自分の最期を父のように迎えたい、父のように死にたいと、このとき強く心に刻みました。

次回更新は8月24日(日)、22時の予定です。

 

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