前著を上梓したとき、私はまだ両親を看取る途中でした。

そして私は、父を2016年の6月に、母を同じ年の11月に亡くしました。

両親とも最後は病院で臨終を迎えました。

まるで呼んでくれたかのような最期でした。

「もうすぐ終わるよ」と待っていてくれたのだと思います。

今までいっぱい泣いたから、両親の葬儀で涙は一滴も出ませんでした。

走馬灯のように思い出が駆けめぐるのかと思ったら、それも違いました。悲しいという気持ちはもちろんありましたが、続けて喪主を務めたため、感傷に浸っている暇がなかったのが正直なところです。

思い返すと私の家族は、ずいぶんとチグハグな関係でした。時代背景がそうさせたのか、それとも私たち親子が単に相性が悪かったからなのか、恐ろしく遠回りをして、やっと両親を看取ることができました。

完璧な人間はいません。ですから、完璧な親でも子でもなくてよいのです。私はやっとこの結論にたどり着きました。なにもこれは私だけに限ったことではなく、外から見ている分にはわからない、どこの家庭にもありうることだと思います。

本連載では、不完全な親と子があちらこちらにぶつかりながら一生を終えた物語を中心に、そのときどきで私が感じたこと、人生を終う「終活」について私が日ごろ感じていること、介護のあり方に対する考えなどをまとめたものです。特に、私たち家族のお終いを、皆さんに読んでいただきたいと思います。