二十代後半、外務省に入省し、インドシナ半島(タイ国では黄金半島と呼ばれています)に位置するタイという国の言葉を学ぶ機会をいただきました。外務省におけるタイ語の専門家としてタイ国に何度も勤務させていただいたお陰か、インドシナの国々へは何度も訪問させていただく機会に恵まれました。

ミャンマー、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナムを含むインドシナには、広域に跨ってタイ族と呼ばれる民族が住んでいます。外務省のいわゆるタイ語専門家としても、インドシナの広域に存在するタイ族に対する個人的思い入れは人一倍強いようです。

その昔、中国の雲南省南部からインドシナに南下してきたタイ族は、日本に移住してきたとされる倭(わ)族との繋がりがあるとする説もある由です。

タイ国には何度も住まわせていただいたお陰で、タイ族の文化が日本の文化にきわめて類似している事例を知るにつれ、タイ族の多くが住むタイ国における出来事や、タイ族の点在するインドシナにまつわる個人的エピソードなどをなんとか取り纏めておきたいという気持ちが齢を重ねるごとに強くなってきています。

インドシナ、なかでもタイ国における出来事や風景、そしてそこに係わる人たちとの出会いは、懐かしく、かつ、人生の哀感さえ感じさせてくれるようでもあり、私的にはエレジーとも比喩できるものです。

 

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