【前回の記事を読む】あれから全く来ない恋人からの連絡。悶々としている私に同僚と不倫している店長が迫ってきた! 更には常連の男性客にまで……
不可解な恋 ~彼氏がお見合いをしました~
「おっはよー、亜紀」
「おはよ。真由も手伝って。今日は特に新作が多いみたい」
「そりゃそーだよー。誕生祭だもん」
「え? 誕生祭……? あ、そういえば一周年だね!」
「そうそう。そゆ事」
そう言って、真由が私がチェックしている箱の横の箱のチェックを始めた。
「ね、さっき、見てたでしょ」
「え?」
「覗き見するくらいなら、声掛けてくれれば良いのに」
「見られてるの分かっていたなら、あんな事やめれば良いだけでしょ?」
「優等生な発言~。だって、求められたら断れないもん」
「はぁ。もういいから、早くチェックして店頭に並べよ」
「は~い」
すっかり浮かれている真由を見ると、結局俊雄さんから連絡がなかった事が重くのしかかった。本当に断れたのかどうか、それだけが知りたい。それさえ連絡がない事が……無性に寂しい。決して信じていない訳じゃないけど、安心させて欲しかった。だからだろうか、今も気持ちはモヤモヤに拍車が掛かったようになっている。
十時になり、お店が開店するなり、ドッと人が押し寄せた。事前に今日は広告に新作大量入荷というのを載せた事を聞いていた。だから人は多いとは思っていたけど、これ程とは思わなかった。私と真由で接客と品出しに走り回り、長澤さんはレジに張り付いている。
その一方で、この忙しさは有難かった。俊雄さんの事を考える暇がなかったからだ。