【前回の記事を読む】彼氏が私以外の人とお見合い…しかも相手は社長令嬢だった。「僕には好きな人がいるって言ったら、泣き出されて…」
不可解な恋 ~彼氏がお見合いをしました~
「あー、ごめん。驚かせた? でもさ、最近急に痩せたっていうより、やつれたって感じに見えて、心配してたんだよね」
そう言いながら、長澤さんは私の肩に手を置き、揉み始めた。
「ほら、肩も凝ってるし、何か悩みがあるの?」
「だ、大丈夫です」
肩揉みから逃れようと席を立つと、クラッとしてよろめいた。その私を長澤さんが抱き留める。一気に長澤さんとの距離が近付き、慌てて離れようとするも、腕を掴まれて引き寄せられ、逃げるなよ、と耳元で囁かれた。
今は俊雄さんのお見合いの事で頭がパンクしそうで、長澤さんの事まで処理し切れず、軽くパニックに陥る。
「離して下さい……! こんなところ真由に見られたら――」
「大丈夫。真由は怒んないよ。むしろ喜ぶんじゃない? 俺がしたい事してるから」
どんな理屈!? とにかく真由に見られる前に何とかしないと……!
「ふーん」
真由の声がした。
「私が誘っても駄目だけど、正幸さんだったら良いんだ?」
意地悪っぽい言い方をされる。誤解なのに。
「これは違うの! 私、よろめいて、それを長澤さんが倒れないように支えてくれただけで――」
「真由、俺が彼女を抱き寄せたんだよ。そうしたかったから。文句ないよな?」
「うん。正幸さんがそうしたかったなら文句はないし、それが叶ったなら嬉しいよ」
いくら不倫の関係といえど、二人のやり取りが不可解で、理解ができなかった。
「真由っ、お昼休憩、交代の時間だよ!」
ドンッと長澤さんを押し退けて離れ、真由の横を通り抜けてフロアに出た。
「はぁ、はぁ……」