【前回の記事を読む】そこでは人間扱いされず、まるで奴隷のように…。――記者として働いていた怒涛の日々、当時の働き方は間違いなく異常であった

麻痺する女

「ああ、ネットで買いました。三百円くらいでしたかね」

「いや、そういうことじゃなくて。なんで? 妊娠して⋯⋯ないよね?」

「はい。なんか気分悪くなった時とか助けられたいんで。ちなみにこっちにもありますよ」

そんなに驚くことだろうかと思いながら精神障害者手帳のコピーを入れたカードホルダーを見せると、先輩はもっと笑った。

そうだ、私はピエロ。私が常軌を逸した行動をすれば、みんなが笑ってくれる。そうすれば私は「生きている」と実感できるのだ。

「もうほんと最高。米ちゃん好きすぎる」

ほら、先輩は今日、私をもっと好きになった。

「それで、胸はどうなの? 痛みはマシになった?」

「最悪ですね。もうこれ、冬には除去しようって決めています」

先輩がまた、少し喜んだ気がした。

前職を辞めて一年後くらいだっただろうか、デリケートゾーンにできたできものをレーザーで焼いてもらうため、私は先輩に病院に付き添ってもらったことがある。

確かそれは一年でもっとも大きな、県をあげての祭りがあった日で、私たちはその会場に行く前、病院で待ち合わせをした。

静かな待合室で二人キャッキャと話し、それから名前を呼ばれた私は一応手術と名の付く処置を受けた。痛みへの恐怖を紛らわそうと付き添ってもらったのだが、怖いことには変わりなかった。