「一括でお願いします」とカードを差し出す際、割に合わないバイトをしたような気分になった。

今回の施術のテーマは、夫が気づくか否かだった。そこに最大の面白さを置いていた。夫のリアクションを見るためだけに身体にメスを入れさせたと言っても過言ではない。

だが結論として、夫は一切気づかなかった。手術前後の数日間は、仕事だ出張だと理由をつけて会うことを拒み、最高かつ完璧に仕上げた状態で再会し、行為に及んだ。

確実に豊かさを増したそれ、異物の入ったそれに、だが彼は全く気づかず、果てた。私だけは、自分の肉体の中で動く異物を感じて、感じなかった。今度は負けた気がした。

でも生きていられる、早く先輩に話したい、そう思った。

夫は七歳も年下なだけあって、とにかくかわいさに特化している。私への懐き方は子犬のようだ。彼と過ごす時間は、真っ白なキャンバスに色を足していくような喜びと達成感に満ちている。

前の夫は私にとって忘れてしまいたい人生の汚点だ。

出会った当初感じた印象は、優しくてかわいくて素直で従順で、ともに家庭を築くには適任である、だった。しかしそのどれもが勘違いだった。

優しさは「考えなし」で、かわいさは「幼さ」で、素直で従順なのは私に「女」ではなく「母」を求めていたからだったのだ。(今の夫はそうではない「かわいさ」や「素直さ」なのである)

次回更新は8月25日(月)、19時の予定です。

 

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