「わたし、食料の調達や調理、受け持ってもいいですから」

賛成意見を言った手前、何か手伝わなくてはいけないと思ったのだろう。みきの気持ちに紗英は救われた。

「わたし、栄養学部ですし」

「あ、そっか」

紗英はうなずいた。紗英は看護学部で真琴と同じ学部だが、みきは医療栄養学部だから、調理は紗英や真琴よりも手馴れているはずだ。

「みき、助かるわ。ありがとう」

「はい。何でも言ってください!」

笑顔を振りまいてみきは去っていった。

「紗英」

また呼びかけられた。

「ああ、野々花……」

副部長の香住(かすみ)野々花(ののか)だ。紗英と同じ三年だった。

部員たちはすでにみんな帰っており、あとは鍵をかける部長と副部長の二人だけになっていた。

「紗英、いいのぉ? 櫻井さんの意見のほうがよっぽど部長らしかったよ」

苦笑ぎみで野々花が紗英を見て言った。

「そうね。でも仕方ないわ」

紗英は、あの櫻井真琴だからという顔をする。

「わたしたち学生の間にも社会的格差が出ているってことか。嫌だなぁ。そういうの」

「……」

野々花は今頃になって意見を言う。なぜさっき言わなかったのか。あとになって言うほうが、よっぽどたちが悪い。だが、紗英は口にしない。