そういえば娘の鳴き声を聞いて大人しくしていたような。でも我が家はアレルギー体質だから、メス猫を飼う事は出来ないなぁと、せっかくの解決策も諦めモードに入っていた。

数日後、思いも寄らない出来事が起こった。

朝、部屋の換気をしようと二階に上がり、娘の部屋の南側の窓を開けると、屋根の上に小さな白い猫が丸くなって座っていた。私は

「あれっ? どうしたの? どこから来たの?」

と覗きながら声をかけた。すると白い子猫は黄緑色の綺麗な目で、私の事をジィ~~ッと見つめていた。

「そっかぁ、日向ぼっこしてたんだ。可愛いねえ。ゆっくりしてて」

と話しかけて窓を閉めた。

またある日の出来事。

私は洗濯物を取り込もうと二階に上がった。ベランダに出て洗濯物を外していると、足元にあった青いちりとりの上で、あの白い子猫が気持ち良さそうに眠っていた。

「あっ、この間の猫ちゃんだ」

私はそぉ~っと洗濯物を全部外して部屋の中に入った。次の朝、洗濯物を干す時には子猫はいなかったので、ちりとりを一階に片付けた。

今思えば片付けずに置いておけば良かった。ちりとりにスッポリ入るぐらいの小さな時期は短いから、もっと寝かせてあげれば良かった。私はそこでおいたをされては困ると思って片付けてしまったのである。あのちりとりで日向ぼっこしながら気持ち良く眠る姿を見たのは、その一度きりだが今も目に焼きついている。

この子猫は、お隣さんの二階まで伸びている梅の木をよじ登って、我が家の二階の屋根に飛び降りる。そして瓦の上をスタスタと歩いてベランダに入る。今度はベランダから脇の朱塗りのトタン屋根に降りて、娘の部屋の窓の下まで歩いて日向ぼっこをする。これを日課としてタイミングが合えば見る事が出来た。私は(何をしているのかなぁ?)と思っていた。

 

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