【前回の記事を読む】この日を境に毎晩我が家に帰ってくるようになったものすごく大きなネズミ……それは我が家の平穏を脅かす存在であった

丙午と野良猫記

またある朝。娘と息子が小学校へ登校したので、私は部屋を掃除していた。あれは確か九時半頃である。私は一階の和室に掃除機をかけていた。ちょうどその時、「ドカッ」とあの大きなネズミが朝帰りしてきた。

「えっ!? 何!? 今朝出て行ったんじゃないの?」

と、私は天井に向かって声を発した。掃除機を止めて、静かにして物音がしないか耳を澄ました。すると案の定、ネズミが、

「ドカッ。ドカッ。ガサガサ」

と動き始めた。私はさすがに腹が立った。一人だった事もあり、日頃の鬱憤が溜まっていたので、ネズミに向かって説教を始めた。

「なんでまた朝帰ってきたの!! 今晩はお客さんが何人も来るんだから、帰ってきちゃあダメでしょ!!」

私は掃除機のブラシが付いているヘッドの部分を、天井にドンドンあてて外に追い出そうとした。

「毎晩毎晩帰ってきて、今晩は絶対に帰ってくるんじゃないよ。お客さんを驚かせてみっともないから、わかった!?」

と私は本気で怒ってやった。するとネズミは黙~って話を聞いていた。

少し経つと、「ドカッ」と庭に飛び降りて出ていった。

「なんだ、話せばわかるじゃん。頭が良いなあ。あー、良かった、良かった」

と私は大声で発散し、ネズミが退散した事もあってウキウキになり、また掃除機をかけ始めた。

その夜お客さんが五~六人、我が家にいらっしゃった。和やかに語り合い、充実したひと時を過ごして午後七時半頃になった。

「ドカッ。ドドドドォ……」

「ただいまぁー」と言わんばかりに大きな音で、いつも通り一階の和室の方からネズミが帰って来た。

お客さん達は、

「えっ!? 何、何!?」「ドカドカいってるんだけど」

と、誰もが聞いた事がない大きな音に驚いた。

「いやぁ~~。皆様、ネズミなんです」

と私は苦笑いしながら事情を説明した。お客さん達は皆、目を点にしていた。二度と我が家に来たくないと思われないよう私も必死になった。そんな私の心もつゆ知らず、ネズミは元気良く天井をガサガサ荒らしていた。アホな世界である。