真昼の決闘 バトル2
先手 貞雄
このガサツ女、ガサツだけならまだしも、時に吾輩に無礼を働く。吾輩に向かって「歳はいくつだ」と聞いてくる。
寝起きの時など面倒くさいので適当に「19」と言うと、このガサツ、手を叩いて大笑いしている。そして偉そうに「なんで娘の私より若いのか。おかしいと思わないか。もう一度考えてみろ」と言う。「知るか。何分吾輩はお前のようなガサツを娘に持った覚えはないのだから」。
ガサツがしつこいので、こうなったら「やけのやんぱち日焼けのなすび」だ。思いついた数字を片端から言ってやる。「29」「59」そのうちガサツの「97」というどでかい声が響き渡る。
「知ってるなら聞くな!」心の中で毒づいてやる。回覧板が無造作に置いてある。ここは家長の責任としてしっかり読んで、隣りに回さなければならない。さてさて何か目新しい情報はあるかな。
飛び込んできたのは「新成人の皆様へ」というお知らせ。何々。
「平成12年4月2日~平成13年4月1日生まれで令和3年1月11日に成人式を迎える人は下記欄にご記入下さい」。町内会からお祝い品が出るとある。
13年、吾輩のことではないか。早速記入する。
氏名:車貞雄、性別:男
生年月日:平成○○年○○月○○日とあるところに13年11月26日と入れる。
住所:番地まで覚えていない。葛飾柴又とだけ書けば十分だろう。柴又で車家と言ったら我家だけだ。お祝い品の配達に間違うことはないだろう。捺印。完璧。
あとはガサツが見もせず回覧板を隣家のポストに入れるだろう。やはり車家は吾輩でもっているようなものだ。労働をしたら疲れた。さあ昼飯だ。