普段は一頭しか仕留めてこなかった彼が、涼しい顔をして、たった一本の矢でもって七頭ものバッファローを持ち帰ってくると、部族全体が大いに沸き立った。

みんなが集まって、ドゥモの狩りの腕前を褒めちぎったり、彼の叔父が得意になって肉をみんなに分けながら、「美しい狩りとは」の題で演説をぶっている光景はちょっとしたお祭りのようだったし、大勢に担ぎ上げられるといった体験はなかなか気持ちのよいものだったようだ。

集まってきた人の中には、ハミングアローの父親のキッキング・バードもいた。彼も狩人だったし、その日彼の家は四頭もバッファローを持って帰っていたので、別にドゥモ達の肉を分けてもらう必要はなかったが、立派な功績をつくった若者に賛辞を述べに来たのだった。

叔父さん! なにやってるんだよ! キッキング・バードさんに早くお裾分けを。ああっ、駄目だよそんな硬い所。もっと柔らかい部分をあげてよ。

といきなり金切り声でまくし立てはじめたドゥモにおたおたしながら、叔父は肉を切り直し、キッキング・バードは気を使ってくれるなと、興奮するドゥモを宥(なだ)めた。

子供や女性や老人に、チーフとブライト・アイまでも集まってきていたので、もしかしたらハミングアローも来てくれるかもしれないと期待したが、キッキング・バードは娘を連れてはいなかった。

 

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