体組織からの一次求心性線維を伝わってきた信号は、一次神経線維末端からグルタミン酸などの「神経伝達物質」をシナプスに放出させます。放出された神経伝達物質は脊髄から脳に信号を伝達する脊髄神経細胞の受容体がとらえます。

侵害感覚を脊髄に伝える一次求心性線維にはいくつかの種類があり、それぞれが異なる神経伝達物質を含んでいます。一方、神経伝達物質を受け取る二次求心性神経細胞(脊髄後角神経細胞ともいいます)がもつ神経伝達物質受容体もいくつかあります。

シナプスの存在理由は「警報の調整」にあります。脊髄のシナプスでは神経伝達物質の放出と受け取りを調整することにより、警報の「強さ、広がり1、持続時間」が自動的に強められたり弱められたりしているのです。痛みを強めるしくみを「感作」(すでに説明しました)、弱めるしくみを「抑制」といいます。

脊髄で生じる感作は、体組織の受容器に生じる末梢性感作と区別して「中枢性感作」といいます。中枢性感作は一次求心性線維の神経伝達物質の放出が増えたり、脊髄の二次求心性細胞の受容体の反応性が高まったりして起こります。


1 侵害刺激が強い場合には、痛みは損傷部位の周囲の広い範囲に知覚される。たとえば指先に針を刺すと指全体に痛みを感じることがある。

【参考文献】

(5)養老孟司 南伸坊『超老人の壁』毎日新聞出版、2017年

次回更新は7月29日(火)、8時の予定です。

 

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