ここはそんな場所だ。常識をドブに捨てた不浄の楽園。それが美徳とさえ謳われる魔の孤島、通称ごみの城。
途端に足を掬われた。信じられないことにこのあたしが、迷宮ですら瞑目して歩けると自負するこのあたしが、危うく配線の束に顔を突っ込むところだった。
足元に散乱していたのはごくありふれた物だった。引き裂かれたごみ袋、セルロイドの胴体、骨折したビニール傘。そんな無数のガラクタに足を捕られるほど屈辱的なことはない。
「最悪」
壁面を埋める疥癬(かいせん)の張り紙がやけに嘲笑していた。それに釣られて路地裏までが笑いだし、漆黒の闇に呑み込もうとした。
「やめて」
この世に堕ちた日から幾万の選択を繰り返した。ここで灰になるべきか、あたし自身に問い続けた。
そして、否と言う。
きっと、それを咎める者はいないだろう。永遠に。
鋭角に左折した先に突如として繭玉が浮かんだ。暗黒の中で唯一行く道を照らす一条の光。それが万華鏡のごとく回転し、中央広場へと手招く。まさに路地裏の奇跡。だからこそ、その先がどんなに悪質でも、この道を選んだ。
繭玉を抜けると中央広場が広がった。